自律神経失調症について

頭重感やめまい、ふらつきなど、病院で検査をしても異常がみつからないといった原因のはっきりしない”体の不調”に悩まされていないでしょうか?

目次

自律神経失調症の定義について

自律神経失調症・・・病院やクリニック、ネットなどでも検索ワードとしては頻繁に見るこの言葉ですが、未だ正確な医学上の定義がなく、自律神経のバランスが乱れた状態や症状の集まりを指して使用される事が多い診断名です。日本でよく使用される診断名ですが、臓器別での病気の診断や治療が発達したアメリカなどでは精神疾患としてカテゴライズされたりします。

日本心身医学会の定義によると、「自律神経失調症とは、種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの」とされています。

つまり、自律神経の乱れから全身の様々な症状(いわゆる不定愁訴)が生じて、原因についてよく調べても異常所見が見つからず、うつ病やパニック障害などの明らかな精神疾患ではないものとされます。ちなみに不定愁訴とは、「なんとなく不調」「体が重だるい」など繰り返し症状が出現して身体の検査をするが、診察や検査で異常所見が乏しいものをさします。

上の定義に従うと、これらの診断名にたどり着くには①不定愁訴が続き内科などの身体科を受診し異常所見がないとされること 次に②精神科などで明らかな精神疾患でもないと診断される事が必須となります。①と②のどちらが抜け落ちてもよくありません。

よく外来などで質問にあがりますが、自律神経の失調症状があり、うつ病やパニック障害と診断される場合は、それらの病気の症状の一部として、うつ病やパニック障害の治療を行う事となります。

自律神経とは

私たちの体には無数の神経が走り、神経を介して体内外の色々な情報を伝えあっています。
単純化した例で言うと、「腕を上げる」にも脳からの命令を腕の筋肉に伝えたり、腕の上がり具合を脳にフィードバックしてこのくらいで良いかと脳の中で計算して調整したりします。

神経を分類すると大きく【1】中枢神経と【2】末梢神経に分けることができます。
中枢神経とは脳や脊髄の中にある神経を指し、体の外と内側からの情報が集まりそれらを解析したり命令を出したりするところです。末梢神経は感覚を中枢に伝えたり、中枢からの情報を末梢(全身の臓器、血管など)に伝えたりする役割がありま

末梢神経は(1)体性神経(動物神経)と(2)自律神経(植物神経)とに分けられます。体性神経は随意神経と呼び、自分でコントロールが出来る神経です。体性神経は自分の意思で筋肉を動かす運動神経と、感じた刺激(触覚や痛覚、温度感覚など)を中枢に伝える感覚神経とでつくられています(神経の分類)。

一方自律神経は自分でコントロール出来ない神経です。全身の臓器や血管を支配し、その運動をコントロールしてくれています。例えば全身の細胞の酸素の需要の度合いに合わせて、一定の血液を全身に送り出す優れたポンプの働きをする心臓。私たちが意識せずとも自動的に働いてくれます。止めようとか動けとか意識するしないに関わらず、寝ている間も体内の状況を中枢が分析して全身の自律神経に的確な指示情報を伝えているのです。

自律神経は大きく①交感神経と②副交感神経に分けられます。
短期的な戦いにむけて緊張を高める神経の交感神経と、中~長期的に見て次の戦いに備えリラックスや休息を促す副交感神経からなります。体の中では、正反対の働きを示す①と②がバランスをとりながら機能して安定したコンディションを作りだし、現代の戦いである生産活動を持続していけるように調整しています(交感神経と副交感神経の働き)。

自律神経のバランスについて

短期的な戦いに向けて適度な緊張と興奮をもたらすのが交感神経です。主に昼間の活動時間に活性化している神経で、脳や体を覚醒・活動モードにして、集中して活動できるような状態を作ります。具体的には交感神経が活性化すると脳が覚醒し、呼吸や脈拍は早くなり、血圧は上がります。

一方、次の戦いに向けて休息やリラックスをもたらすのが副交感神経となります。主に夜間に活性化し、脳や体をリラックスモードに変え、ゆっくりと休めるような状態を作ります。具体的には副交感神経が活性化すると脳の覚醒度が下がり眠気をもたらし、また呼吸や脈拍はゆっくりになり、血圧も下がります。

このように状況に応じて環境に適応していけるように交感神経と副交感神経がバランスをとり、毎日いい調子を作り上げているわけです。この交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうのが自律神経失調症と呼ばれる状態です(ストレスが自律神経に与える影響)。

自律神経自体が自分でコントロール出来ない神経のため、一度崩れた状態からバランスのとれた状態に思い通りにコントロールして簡単に戻す事は難しいのです。

自律神経の働くリズムが狂うとどうなるか?
例えば、本来は集中して活動に取り組むべき昼間に交感神経が働かないと、眠気や倦怠感、集中力の低下などの状態に陥ってしまいます。反対にゆったりリラックスして休息すべき夜間に交感神経が働き過ぎると、眠気が起こらず不眠やイライラ、頭痛、食欲不振、休めないので常に疲れを感じたり、場合によっては血圧や血糖が上昇したりもします。

自律神経失調症とは

自律神経は全身の臓器や血管に分布してそれらをタイムリーにバランスをとっており、それらのバランスが崩れると全身に様々な症状として出現してきます(自律神経失調症の主な症状)。

疾患として確立されたものでもないですし、上のような解剖学的・生理学的特徴をもった自律神経のアンバランスは疾患特異的な症状はありません。逆にどんな症状でもありと言っても過言ではないのです。

何でもありの症状の中で例として、頭痛、耳鳴り、めまい・ふらつき感、体のしびれ、倦怠感、食欲不振、不眠などなど。もちろんこれらの症状=自律神経失調症の症状という訳ではありません。こういった症状があれば、まず内科など全身の身体の病気をチェックして貰い、そこで身体的に異常がない事を確認する事が大切です。例えば、めまいがする場合は耳鼻科に行って、耳に異常がないか検査をして調べて貰うことが大切です。その次に、精神疾患を発症していないかどうか?これについては精神科やメンタルクリニックでチェックして貰いましょう。そこで身体的な異常がなく、明らかな精神疾患を発症していないとなれば、自律神経失調症として診断される事となります(上述したように、海外では自律神経失調症は精神疾患に含まれるのです)。

自律神経失調症の要因

自律神経、つまり交感神経と副交感神経の活性のバランスが崩れる要因について、現代的に頻度の高いものとしては、対人関係のストレスを代表とした精神的なストレスが挙げられます。職場や学校などの日常生活の中で強い葛藤や緊張を生み出す人間関係の中では、交感神経が活性化します。そういった状態が短期間の内に解消さるのなら問題ないでしょうが、持続すると本来は休息モードの夜間にも交感神経が働き、休めなくなります。疲労回復のサイクルが1日では回らなくなり、疲労が蓄積されていきます。それは心身共に悪循環に陥り、疲れた身体と脳を使って現在の問題の解決にあたらないといけなくなり、本来の力を発揮してその問題をクリアできなくなったりします。

また近年では長時勤務などにより、肉体的な疲労が持続し、それに適応するために交感神経が持続して活性化し、上の様な状態に陥る事もしばし認められます。解決困難な難しい課題を長期間抱えてしまっている場合は要注意です。

他にも生活リズムが乱れてしまうことで自律神経のバランスを崩し場合もあります。毎晩夜更かしが続き、本来は夜間に副交感神経が活性化し心身を休めないといけない時間に交感神経が刺激されてしまったり、または朝遅くまで寝ていたりすることで、日中に交感神経が刺激されず、結果として自律神経のバランスが崩れてしまうことも多いのです。

またこういった要因は自分自身の持って生まれた気質や性格傾向なども影響します。
例えば過剰な完璧主義、内向性の強さ、他者からの評価を意識し過ぎてしまう傾向などがあると、ストレスをマイナス方向に過剰評価してしまい、それが新たに精神的ストレスを生み出す自家中毒のような負のサイクル作り出してしまうのです。

自律神経失調症の治療について

診断と治療については身体疾患や精神疾患があればそちらを優先します。精神疾患の診断には時間がかかる場合があり、確定診断がつくまでに自律神経の失調状態を緩和する治療もしますし、最終的に自律神経失調症として診断された場合の治療も同じです。

神経のアンバランスな状態を修正する方向で治療を働きかけていきます。自律神経失調症を根本的に治療するお薬はありません。あくまで補助的に薬は使っていきます。例えば、交感神経が過剰に働き過ぎている状態や、その結果として不安や緊張などの精神症状が持続し悪循環に陥っている状態を薬を使って改善させていきます。短期的に抗不安薬などを使って、症状の緩和や睡眠覚醒リズムの修正を行います。ここで薬を単に飲み続ければ良いという訳ではなく、症状の改善と安定化、再発予防に精神療法などを併用していきます。症状が強い当初は薬を上手に活用して悪循環やアンバランスを改善し、落ち着いてきたら精神療法のウェイトを増やしていきます。規則正しい行動へと生活習慣を変容させていったり、物事の捉え方に働きかける認知行動療法や、周囲を気にするあまり過剰なとらわれに陥ってしまっているのを緩和していく森田療法などを組み合わせていきます。

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