起立性調節障害

小学校高学年~中学生のお子さんで、午前中の不調が続く、顔色が青白い、朝が起きれない、朝の身体のだるさが強く、立ちくらみや食欲不振、気分がすぐれない日がある。学校も休みがちだけど、体調が悪いのかと思うと、遊びの予定がある日は早く起きて来れて、これって怠け病?と不思議に思われている方もいるかもしれません。もしかすると起立性調節障害という身体の病気かもしれません。

目次

起立性調節障害とは

起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)とは、起立に伴う循環動態の変化に対する生体の代償的調節機構が、何らかの原因で破たんして生じたものと考えられています。
このシステムには、全身を流れる血液量(循環血液量)、心臓がポンプ作用で全身に向けて送り出す血液量(心拍出量)、体中の血管が閉じたり開いたりの特性(末梢血管特性)、脳内の血液循環の特性(脳循環調整特性)、それらを調節統合する自律神経機能などが含まれており、これらの機構のどこかに異常がみられると起こってくる身体疾患です。☞ストレスが自律神経に与える影響

自律神経系のなかの循環調節が不調をきたす事が主要な原因で、その結果、全身の臓器~脳への血流が低下し、色々な症状が現れてしまいます。
またODの特徴として、心理社会的ストレスによって影響を受けやすく、いわゆる子どもの心身症の中でも頻度の高い疾患とされています。ある調査では、思春期で心身症と診断した約7割近くがODの診断であったという報告もあります。

その子にとってのストレスが増強すると症状が強まり、ストレスが軽いと症状も軽くなるのです。ODの約半数が、2次的に不登校の状態に陥っており、不登校の3~4割にODを伴うことから、診療には心身医学的アプローチが必要となります。

起立性調整障害の症状と特徴について

症状としては以下のような身体症状と精神症状があります。

・立ちくらみ
・立っている時の気分不良
・めまい(浮動感)
・倦怠感(横になると軽減する)
・失神または失神前症状
・動悸
・頭痛、腹痛
・手足の冷え
・車酔い
・朝起き不良
・入眠困難などの睡眠障害
・疲れやすさ
・イライラ
・集中力・思考力の低下
・午前中の無気力感・意欲低下
・午前中の食欲低下

特に体調不良は午前中に強く、夕方から夜には元気になるという日内パターンがあります。症状の程度も軽症から重症まで幅広く、軽症例のように受診する必要がないくらい軽い方もいれば、重症で日常生活がままならないほど症状が思い方おられます。

午前中を中心に布団から起きれず、夜には元気。お勤めから帰宅した家族はそんな子の様子を見て、「学校休むほどのもの!?」とか「この調子なら明日は学校に行けそうだね!」と思えるのですが、元気があって逆に夜が眠れなかったり、やっぱり翌日も朝が起きれず不調が続く。どこか悪いのかな?と思っていても、土日に遊びとなると元気に起きて出かけていく。そんな様子を見ていると「怠け病!」「夜早く寝ないから朝が起きれないのよ!」と、ついつい声をかけてしまう場合もあるかと思います。☞ODが悪化し、不登校・ひきこもりを伴う心理社会的機序

起立性調節障害の診断について

多くの場合、体調の悪さから小児科などを受診すると思います。その際に詳細な問診や診察、血液検査などでOD以外の身体疾患ではないか?と鑑別していきます。検査の結果、他の身体疾患を疑う所見がなく、ODの診断の基準を満たす場合は、新起立試験という検査を行います。その試験からODの中で①起立直後性低血圧、②体位性頻脈症候群、③神経調節性失神、④遷延性起立性低血圧のどれにあたるかを分類し、加えて重症度や心理社会的な要因がどのくらい影響しているかなどを評価して、治療計画を立てていきます。

起立性調節障害の治療について

治療は幾つかあり、重症度や心理社会的要因の程度に合わせて組み合わせて行います。
ODの治療においては、特に本人や保護者、学校側の関係者の方が誤解に基づく対応をしてしまっている場合もあり、しっかりと疾患の特徴について説明を行い理解を深めるところが重要とされています。例えば、怠け病ではなく身体疾患であることや、日内変動という特徴があること、気の持ちようや生活習慣の是正だけでは治らないことなども理解して頂く大切なポイントです。他には運動や食事などを含めた日常生活の工夫点を実行する非薬物療法を行ったり、学校への指導などの連携も行います。学校への登校が難しくなっている中等症以上では、お薬を使ったり、心理面へのケアも合わせて行っていきます。

お薬については安全性と有効性が確認されたお薬があります。飲み始めて1~2週間で立ちくらみの改善は期待できるものの、症状や生活の活動性の改善までには約1~2ヶ月かかるとされており、効果がないからといってすぐにやめたりしないことが大切です。また漢方薬などを希望される方も多いのですが、現時点では効果について実証はされておりません。標準的な治療を行ったものの改善しなかった場合などに使われる事が多いようです。

治療効果については軽症から重症例までさまざまで、中には大人になっても身体症状が持続する場合もあります。また重症ODはうつ病との鑑別が難しく、治療が長引く中で、精神疾患を合併することもあり、小児科と精神科の併診が望ましい場合もあります。

更に詳しくは☞起立性調節障害Support Group

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