ADHD(注意欠如/多動性障害)について

「小さな頃からヒヤヒヤして遊ぶ時も目が離せなかった」「すぐに注意がそれてしまい忘れ物が多く、学校からの大事な手紙もカバンの奥でクシャクシャ」「中学になっても課題提出が苦手、大学や社会人ではレポートをまとめられず計画通りに仕事が出来ない・・・」昔からなんだか気になり、学校や会社では怒られてばかり。上手くいかないことが続いていると悩んでいる場合、それはもしかするとADHDの影響かもしれません。

目次

ADHDとは

注意欠如/多動性障害(attention deficit/hyperactivity disorder:ADHD)とは ①不注意、②多動性、③衝動性の3つの主要な症状から成りたち、基本的には生まれながらにあるなんらかの脳機能障害が発現の主要因である発達障害の一つです。1900年代前半に最初の報告がなされ、MBD(Minimal Brain Dysfunction:微細脳機能障害)という概念や呼称などの様々な変遷を経て今日に至りました。原因はまだわかっていませんが、家族集積性があり、環境要因より遺伝的な要因が重要とされていますが、要因の全てではなく他の要素が関与していると考えられています。主要な症状は3つありますが、多動症状はADHDの半数以下にしか認められず、多動性は女子より男子に多く就学前後より気づかれやすいとされています。

ADHDの主要な症状について

【A】不注意症状(繰り返される不注意な行動様式/容易に注意がそれること)

①学業、仕事、または他の活動中に綿密に注意できない/不注意なミスをする
(例:細部を見過ごしたり、見逃してしまう、作業が不正確である、全体にまんべんなく注意を分配することが出来ずミスをする)

②注意を持続することが困難である
(例:講義、会話、または長時間の読書や遊びに集中し続けることが難しい、注意や集中を持続させることが苦手)

③話を聞いていないように見える
(例:明らかに注意を逸らすものがない状況でさえ、心がどこか他所にあるように見える、集中すべき時にぼんやり「うわの空」に見える)

④課題をやり遂げられない
(例:課題を始めるがすぐに集中できず、容易に逸れる、用事を頼まれても寄り道してすっかり最初の用事を忘れてしまっている)

⑤課題や活動、物事を順序立てること困難である
(例:一連の課題を遂行することが難しい、資料や持ち物の整理が苦手、作業が乱雑でまとまりがない、思いついた順に仕事をする、時間管理が苦手で期限を守れず遅刻が多い)

⑥精神的努力、注意の持続を要する課題を避ける
(例:学業や宿題、報告書の作成、細かなチェックや書類に漏れなく記入すること、長い文書を見直すことなどをしばしば避けて後回しにする)

⑦課題や活動に必要なものなくしやすい
(例:学校教材、財布、鍵、保険証、眼鏡、携帯電話など不注意でなくしやすい)

⑧外的な刺激で容易に注意をそらされる
(例:隣の人のペンをカチカチする音、会議中に誰かが入ってきたらすぐに気づく、目や耳に入る刺激の方に注意がそれる)

⑨日常で忘れやすさが目立つ
(例:用事や約束などをすっかり忘れてしまう)

【B】衝動性(感情・行動面での衝動性)と多動性(多動または著しい落ち着きのなさ)の症状

①ソワソワしている
(例:手足をそわそわ、もじもじ、椅子をガタガタ、机をとんとん叩いたりじっとできない)

②着席していられない
(例:そこにとどまることを要求される他の場面で、自分の場所を離れる、バイキングでは料理を取りに行く係で力を発揮)

③不適切な状況で走り回ったり高い所へ登ったりする
(例:大人では稀ですが、会議なでソワソワして落ち着かない方もいます)

④静かに余暇活動ができない

⑤しばしば”じっとしていない”、”エンジンで動かされているように”行動する
(例:会議や講義でじっとしていられずまたは不快に感じる、周囲から見ても明らか)

⑥しばしば喋りすぎる
(例:話し出すと夢中になり時間や相手の事を忘れてついつい喋り続けてしまう)

⑦しばしば質問が終わる前に出し抜けに答え始めてしまう
(例:人の話を遮って喋りだす、電話など自分の言いたい事が終われば先に切ってしまう、会話で自分の番を待つことできない)

⑧順番を待つことが難しい
(例:列に割り込む、電車で降りる人を待てず隙間をついて乗り込んでしまう)

⑨しばしば他人を妨害し、邪魔する
(例:他人の会話や活動に横入り干渉する、良かれと思い他人のしていることに口出し、相手のものを勝手に使ったり、先に使ってしまう)

これらの症状が2ヶ所以上の状況で認められ、活動に支障を来たし、半年以上持続している。またその程度は同じ発達段階の周囲と比べ顕著であること。12歳以前から認められ、他の精神疾患によるものではない時に、「ADHD」という診断が考えられます。つまり学校だけ家庭だけに見られる場合や、一時的な期間だけに見られる場合、同年代の子と比べて明らかではない場合、大人になってから出現してきている場合などは除外されます。また他の精神疾患である可能性もあり、このあたりは経験豊富な精神科の除外診断が必要になってきます。

ADHDの診断についてさらに

DSM-5における注意欠如・多動性障害(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder)の診断基準について次に記載します。さらに・・・

ADHD 年齢による行動特徴について

ADHDの行動特徴は年齢や発達水準により見え方が様々です。下記に大体の年齢ごとの大まかな特徴について記します。さらに・・・

ADHDの頻度とその影響について

米国の報告では小児におけるADHDの頻度は3~5%と報告があります。不注意傾向を強調した診断基準での追加調査においては欧米両国で有病率が10%を上回るとの結果があり、衝動性/多動性優勢型(3.4~3.9%)、混合型(4.4~4.8%)、不注意優勢型(4.9~9%)とみなされています。日本での調査では大人も含めて約3%くらいだという報告があり、この数字を見ると身近な発達障害と言えるでしょう。

ADHDがその人に及ぼす影響についての研究もいくつかあり、マイナスの影響をもたらすという結果が優勢です。例えばADHDの4人に1人は学力があるにもかかわらず少なくとも1学年は留年を余儀なくされたり、周囲と比べ同じくらいのIQや学歴があったとしても仕事の達成度や職業的な技術の上達が遅れてしまったり、事故にあいやすかったり、自傷のリスクや物質乱用の危険があるとされています。中にはADHDの治療により薬物依存や乱用への発展を防ぐ効果があるとの報告もあります。現時点で多くの研究報告などを総じて判断すると、治療に取り組んだ方が良いと考えられています。

ADHDの治療について

現在のところADHDの方への最良の治療法は海外では薬物療法と考えられています。治療薬の有効性と安全性に関する多くの研究結果がそれを支持しており、薬によっては長期的な投与による悪影響はないと考えられています。

日本でも薬物治療は行われますが、まずは心理社会的治療をはじめに行っていきます。具体的には環境調整、ペアレント・トレーニング、ソーシャルスキル/ライフスキル・トレーニングなどがあります。環境調整では子どもの生活環境からできるだけ刺激を減らし、家庭や学校で課題などに集中しやすい環境を整えていきます。ペアレント・トレーニングでは、保護者を対象に子どものADHD特性の理解を深め、具体的な対処法を身につけることで家族間の衝突や緊張による悪循環を防ぎます。不適切な行動を状況にあった適切な行動に変えていけるよう働きかけもおこなっていきます。これらは短期間ですぐに結果が出るものではありません。支援する方々の共通認識や足並みを揃えながら進めて行き、継続していくことが大切です。このあたりの治療を続けるなかで、必要があれば薬物療法を追加していく場合が多いです。治療が進み家庭や学校での状況が良い方向に向かい、本人にも自分でやっていけるといった自信がついて来たら一度治療を終結します。その後、ライフステージに合わせて自身で抱える課題が増大したり、変化が重なるなどの際は治療を再開するケースもあります。ゆっくりと成長を見守りつつ、状況に合わせた支援を続けていくことが大切です。

思春期以降にADHD特性でお困りの方は、自身のサポーターの1人として、困った時に相談しやすいかかりつけ医を持たれることおすすめします。

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